メンタルコントロールへの取り組みの動機づけになるのは、さまざまな状況で繰り返される葛藤ではありません。これがメンタルコントロールの基本的な考え方です。

むしろ問題になるのは、不幸な結末をもたらしたり、メンタルコントロールが必要だと認識させるような葛藤の痛みに適応しようとする「防衛」の働き(不安や葛藤など、適応できない出来事に再び適応しようとする心の働き。心の安定を守ること)が困りものなのです。

その点では、私達の問題も一昔前の融通が利かない対処なのです。以前はうまく機能していたものが、今では自分の足を引っ張る存在になっている・・・こういうことが多いです。

FXにおける分かりやすい例が「リベンジトレード」です。

これは損失を出したあとで果敢にトレードし、一気に資金を取り戻そうとする心理・行動です。ギャンブルで破滅してしまうパターンです。損失による痛みと欲求不満が過剰な防衛反応となり、痛みを取り除こうという取り組みにつながってしまうのです。

そのときのトレードは、けっして良いチャンスと判断したものではなく、落胆の気持ちや喪失態を無意識のなかに押し込めようとする心の働きでトレードしてしまうのです。当然のことですが、これでさらに損失を膨らませ、悲惨な結末を迎えることも多いです。

ここで防衛のメカニズムが働くのは、深く落ち込んだFXトレーダーが損失の痛みや悲しみには耐えられないと思っているからです。以前ならこうした痛みには確かに耐えられたかもしれません。仕事であれトレードであれ恋愛であれ、通常の損失や喪失には対処できるはずです。

ですが、実際にはそう「感じていない」のです。トレーダーは相変わらず、かつての子供のころのやり方(防衛の働き)で損失や喪失に対処しています。しかし、自分のパターンを明確にすることで自己観察能力が養われ、延々と続く過去のサイクルの結末をはっきりと認識できるようになるのです。

最終的にトレーダーがこうした心の働きに立ち向かい、過去の脅威に新たなやり方で対応できるようになるのは、こうした認識が高まってくるからなのです。

メンタルコントロールを変えるというのは、「簡単にできないことをする」つまり不快感を振り払うような過去の対処法を止めるという意味です

自分のFXトレードを自分自身で指導しなければいけないあなたは、過去のパターンにはまってしまうのではなく、循環的な問題の観察者になって、それを断ち切らなければいけません。

循環的な問題が及ばないところで観察するのです。そうすれば、もう循環に振り回されることはありません。別ページで解説した波とフローチャートは、この自己認識を持続させるのに役立つツールです。あなたの目標は、繰り返しパターンが勝手に芝居をして不幸な結末を迎える「前に」それを認識することです。

これをやり遂げる方法は、次のコーチングの仕事の基本になるものです。あなたはたいてい、あるパターンが表れ始め、それと関連づけられた感情の状態が自分のトレードを妨げるのを観察しているはずです。

先ほどのリベンジトレードの例で言えば、その特徴的な心の動きは、欲求不満と緊張でしょう。それ以外の状況では、喪失感や空虚感です。

その特徴的な心の動きに気づいた途端に、スポーツの実況中継でもしているかのように大声でそれを伝えたくなるでしょう。

例えば、「たった今、俺は損をした。だから本気でイライラしている。気が狂いそうだ。損した金を取り戻したい!。別のトレードがあればいいが、以前それで苦しんだからな。マーケットに飛んで戻ったら、事態はもっと悪くなる!」と大声で言いたくなるかもしれません。

もしこの自己観察の結果を声に出して言えなければ、FXのブログ日誌が同じ機能を果たしてくれます自分が考えていることや感じていること、その考えや感情を振り払うためにやろうとしていること、またその行動でかつてはどのように苦しんだかを詳しく書いておくことです。

無謀なFXトレードのサイクルにはまって資金を失い、罪の意識を感じ、マーケットから撤退し、無謀なトレードを見直して失った時間と機会を取り戻そうとしているFXトレーダーの自己観察の結果は、「もう自分には愛想が尽きた。今日はマーケットから離れたい」となるかもしれません。

心理療法士の役割を演じ、現実に共感するのではなく、現実を見極めることです

「もう自分には愛想が尽きた。今日はマーケットから離れたい」というような心境の時には、私達もパターンを変えることに関心が向かないのです。むしろそのパターンが表れることをより警戒し、その表れ方や結末をより意識するようになっています。

メンタルコントロールを持続させるときには、何日も、あるいは何週間も、一貫して努力することが必要になる場合があります。こうした努力を続けるには、ときにはパターンを完全に断ち切ること、つまりリベンジトレードや無謀なトレードのしすぎを回避することが欠かせなくなるのです。

正しい行動を取る前に、間違ったFXを止めることです。これによって達成感やコントロール感が養われてきます。つまり、自分がパターンにコントロールされるのではなく、自分がパターンをコントロールし始めることになるわけです。

声に出して言ったりブログ日誌をつけたりするだけでは、過剰学習された行動のパターンから抜け出すことはできませんが、選択肢は得られます。何か違う行動を取るだけでも、わずかな額でリベンジトレードをするなど、ごくささいなことでも、ある程度のコントロール感は達成できるのです。

「FXで今起きていることはまったく問題ではない」ということを積極的に自覚するというのも、自己認識を得るために声に出して言うやり方です。問題は過去に起きて苦しんだことであり、今反応する(過剰反応する)ことではないからです。

例えば、損切り注文に引っかかる前に損失を確定してしまうかもしれないし、恐怖感に駆られて早々にFXから逃げだすかもしれません。

この恐怖や逃げだしたくなる気持ちを声に出して言うこと以外にも、次のことをよく自覚しておくと良いです。

「このポジションの損失は真の問題じゃない。自分の損失には以前だって反応しているじゃないか。このトレードのアイディアをこれからは使わないとしても、以前に失った損失がなくなるわけじゃないだろう」

こうして声に出して言うことで本当に強調したいのは、「問題は自分のトレードではない。何か別のものだ」というメッセージです。それで解放され、今になって過去の心の動きに反応するのではなく、「何か他のこと」に対応することができるのです。また、感情的に打ちひしがれたものとしてではなく、単なる一つのトレードとして自分のトレードに対応することもできるのです。

自分のパターンが表れているときに一貫してそれを見極め、受け身の参加者ではなく観察者としての役割を維持すればこそ、自分が著しい進歩を遂げたことが分かるのです。

FXトレードをビデオに録画することで、トレーダーがいかに需要と供給のパターンに敏感になり、それがトレードで意思決定を下すときに役立つか分かります。

(自分のパソコン画面の動画を録画できるフリーツールがありますので、検索してインストールすると良いです。さらに、自分の表情も別のビデオカメラで撮影して、2つを同時に再生してみると面白いです)

あるトレーダーには、FXしている自分を録画できるように、ビデオカメラを自分のほうに向けてもらいました。これは自己観察をはじめ、自分の心の動きや行動のパターンを認識する素晴らしい手段になります。ビデオを再生して繰り返される循環を見ておけば、リアルタイムでトレードをしている最中にそれが表れても敏感に感じ取ることができるようになります・・・

『FXでは自己防衛の働きに立ち向かうこと』の解説ページです。