例えば、アルコール依存症を治療する施設では、「鼻持ちならない考え(否定的な思考)」に気づくようにと会員を指導しています。私達は繰り返される悪い行動パターンをこなし、しかも日々のルーティン(型にはまった行動)に従っています。

多くの人が習慣に支配されているのです。

つまり、一貫した朝のルーティンをこなし、同じ時間に食事をし、ほぼ同じ時間に就寝し、同じ道を通って通勤し、同じ音楽に耳を傾け、同じテレビ番組を見る・・・生活のほとんどがパターン化されているわけです。

私達の考え方もこれと同じです。私達は情報処理の仕方を学び、しかもそれをルーティンの一部にしているのです。私達はわが身を責めてほかの人との衝突を避けようとします。悪い結果を予想しては、事態が悪化しても驚かないようにします。

個々の状況ではこうした考え方でも十分かもしれませんが、それが習慣として深く根づいてしまうと、どうしても世の中をゆがんだ形で見てしまうのです。結局のところ、すべてが私達の過失ではないし、すべての物事が不十分なわけでもないのです。

一度そうした考え方が自然にできるようになると、それに伴う心の動きも同じように自然になってきます。

私達は自分を責めると落胆し、意気消沈します。最悪の状態を予想すると心配になり、不安になります。こうした『スキーマ=物事のとらえ方』をFXトレードに持ち込んでいる以上、為替相場に客観的に反応できなくなり、まるでロボットのように自動思考や悪い感じ方で対応するようになってしまうのです。

こうした現実に気付くことが重要です。

ある時点ではFXに没頭し、マーケットのパターンを観察し、それに従って行動しているのに、やがて変化が起きると、もう自分のメンタルをコントロールできなくなる・・・

メンタルコントロールが奪われてしまった状態です。

そこで立ち上がった悪い『スキーマ=物事のとらえ方』が、今度は目の前の状況とはまったく関係なさそうな思考や感情を雪崩のように誘発してしまいます。

もしトレード中に誰かにパソコンを奪われて、いきなり手当たり次第に違う画面に切り替えられたらどうするでしょう。マウスが勝手に動きだし、クリックし、望んでもいない注文を出してしまったらどうするでしょう・・・

もしそんなことが起きれば間違いなく動揺するはずです。自分のパソコンやマウスが誰かにコントロールされているなんて耐えられるはずがないです。コントロール権を取り戻そうと、できることなら何でもするでしょう。それが心が奪われたことに対する自分の姿勢なのです。

コントロール権を握っていても自動思考をただ観察しているだけでは不十分です。自分の心と行動のコントロール権を失ったことに嫌悪感を抱かなければいけません。まずは人生のあらゆる面で誤った『スキーマ=物事のとらえ方』に押しつけられてきた痛みに気づくことで、そのスキーマを変えようという意欲が生まれてくるのです。

音声や映像を記録して自分の表情や独り言を見直したり、トレード中の極端な心の動きを追っていたりしていると、自分の悪い考えに注意するようになります。

悪いメンタルパターンを確認する有効な方法はFXでの最悪の意思決定を見直すこと

さらにもう一つ、問題ある『スキーマ=物事のとらえ方』やメンタルパターンを確認する有効な方法があります。それは、最悪の意思決定を見直すことです。

最悪の意思決定が最大の負けトレードになる場合もありますが、そうではなく、単に絶好のチャンスを見逃しただけという場合もありますよね。

このように、最悪の意思決定に対する反応から、最悪の意思決定について分かることもあります。

「どうしてあんなことをしたんだろう?」

この反応こそが、ひどい意思決定を下したときの素晴らしいメッセージであり、本当は自分本来のメンタルではなかったことを示しているのです。また、自分はどうしてあんな間違いをしてしまったのか、どうしてあんな間抜けなことをしてしまったのかと当惑しているときには、心が奪われていたことを認識しているのです。

一度こうした最悪のトレードを認識すると、FXブログ日誌を見直して最近のトレード体験を振り返ってみる必要が出てきますが、そうなると、当時の誤った意思決定に至った思考や感情をもう一度思い起こしてみたくなるのです。

普段は、「次はもっとしっかりしたルールに従い、もっとしっかり準備をしてトレードに臨もう」と再確認するだけで、そういう出来事は隠しておきたくなるものですが、この練習では、あのときは何を考えていたのか・・・自分の意思決定に従って何を回避しようとしていたのか・・・あるいは何をやり遂げようとしていたのかなど、心理学的に、誤った意思決定のプロセスをつぶさに明らかにしてほしいです。

このように情けないトレードの最中に浮かんでくる共通した思考や感情は、そのときに心の中にどのような『スキーマ=物事のとらえ方』が描かれていたのかを知る手掛かりになります。

きっと安全性のスキーマだったかもしれない・・・「含み益を失ったり特定のリスクをとったりする余裕などなかったはずだ」と自分に語り掛けていた・・・

いや、そうではなく、自尊心のスキーマだったかもしれない・・・「もしこのトレードがホームランになっていたらどんなに素晴らしかったことか」と自分に語り掛けていた・・・

FX中のこうした感情、つまり不安や自信過剰といった感情が、そのときにはどのように自動思考が浮かんできたのかを知る手掛かりになるのです。

私自身はFXで、安全性、つまり危険を回避するというテーマのバリエーションが普通の『スキーマ=物事のとらえ方』として描いています。

確かに、これは状況によっては効果的な方法で、トレーダーが適切なポジションサイズを決めたり損失を制限したりするのに役に立ちます。ただ、スキーマがゆがんだ認識を取り込んでいるときには、大きく損をすることではなく、高値からちょっと下げているだけなのに危険なものだと決めつけてしまうのです。こうなると勝ちトレードを続けるのがとくに難しくなります。

少しでも上昇すれば利食いたいという気持ちが刺激されるからです。

より現実的に考えれば、含み益が目減りするという点からも機会を見逃してしまうという点からも、危険なものだと定義するはずです。

私の最悪のトレードのいくつかは、短期的な見方で行動しているうちに長期的な為替相場の動きを見失ってしまったというものです。危険を回避する必要に迫られて、同時に利益も減らしてしまうという危険にさらされていたわけです。

こうした最悪のFXトレードが、メンタルコントロールのパターンに広く及んでいることに注意しましょう。一度誤った前提条件から始めてしまうと、「リスクを回避せざるを得なくなり」、一度リスクを自分の意に反して動く相場であると決めつけてしまうと、それに従って感情や行動の方向が決まってしまうのです。

自分の最悪のトレードを見直すのはつらいものですが、そこから解放されることでもあるのです。それによって自分の心がどこに向かっていたのかが分かるだけでなく、正しい行動にも導くことができるからです。

最悪のFXトレードの多くは自分に対する要求が原因

為替相場の動きに乗るべきだ、乗らなければ、儲けるべきだ、儲けなければ、と何度自分に語り掛けたかを覚えておくと良いです。そういう要求が「絶対的なもの」になると、結局は為替相場の動きを追い掛け、わずかな損失を確定するのも拒み、良いトレードの原則を破ってしまうことにもなりかねません。

自分のトレードルールではなく、そうした内なる要求に焦点を当てているときが最も損失を出しやすいです。そうした要求があるかないかは、その要求から生まれるプレッシャーという内なる感情で分かるものです。

良いチャンスで入ってトレードしているときと、プレッシャーからトレードしているときの感情は違います。自分の最悪のトレードとそれに関連づけられた感情を追っていけば、警戒して自分の自動思考がどのように良いトレードを妨げているのかが分かってきます・・・

『自分の最悪のFXトレードから学ぶ方法』の解説ページです。