過去の心の動きの表れやトレード上のミスを、自分の心の地図を確認する優れた方法として、また自分の認識をゆがめる可能性のあるものとして見直してみましょう。
ただ、認知的な作業の目標は、自分の自動思考(ある状況に置かれたときに瞬間的に浮かんでくる考えやイメージ)、すなわち一時的に良くない考えが浮かんできたときにそれを把握し、自分の心とトレードが奪われないようにすることです。
提案するFXブログ日誌の形式は、トレードした日または週を1ページとし(トレードの頻度によって異なる)、各ページを表の形にしたものです。
表の一列目には、自分がトレードで問題を抱えたときに発生した出来事について記します。
また、マーケットで何か起きたか、自分はどんなプランを立てていたか、どのように仕掛けたか、または仕掛けなかったかを記してもいいです。
二列目には、その問題について自分がどう自分に語り掛けていたか、その詳細を記します。
この二列目にはさまざまな出来事に対する自分の信念を記すという、従来のやり方にしました。
ただ、あなた自身の自己教育で最も役に立ちそうなのは、その出来事についての自分の考えを実際に文字に起こし、何を考え、何を感じたかを把握することです。
二列目では、「トレードできる状態だったのになぜしなかったんだろう? 今日は利益を増やすべきだったのに、逆に損をしてしまった。もう自分にはうんざりだ。FXを続けたいのかどうかも分からない。」など、出来るだけ細かくその時に浮かんできた考えを明確に書いてください。
多くの場合、立ち上がっている『スキーマ=物事のとらえ方』がどういう性質のものかは、自分が文字にした日記に含まれるキーワードで分かります。
例えば、前の例では、「すべきだった」が完璧主義的な自尊心の『スキーマ=物事のとらえ方』を立ち上げ、それが怒った言葉や落胆した気持ちにつながっているという良い合図になることが多いです。
一度「しなければならない」「すべきである」の引き金が引かれると、FXトレーダーは為替相場から注意をそらし、自尊心という問題に向かってしまいます。
建設的な状況だとこうはならないのです・・・むしろ自分への言葉は批判的で厳しいものになります。
このようなメンタルコントロールでは、トレーダーが行動を起こすとは考えにくいです。
私はこの二列目の自動思考を、特定の状況(一列目)になると音を立てる脳のチャイムのようなものだと考えています。
状況が変わってもまったく同じ言葉やフレーズが繰り返し書かれていることが多いですが、自分の認知日誌を見直していると、このプロセスを容易に観察できるようになります。
自分の言葉がいかに否定的かということだけでなく、いかにロボットのように自動的に出てきているかも分かるようになります。
三列目には、そのセルフトークの結果どうしたか、つまり何を感じて、どういう行動を起こしたかを記します。
例えば、前の例で言うと、怒りや完璧主義的な思考によってその日はふてくされて黙ってしまい、機会や現在の為替相場について学ぶチャンスを見逃してしまうかもしれない・・・
また、怒った自分の言葉が後のリベンジトレードになり、もっと大きな損失につながる可能性もあります。
三列目には、個人的なことも資金のことも含め、自動思考の結果を「すべて」時系列で書き出してみることです。
時間をかけてこの三列目を見直していくと、思考のゆがみが絶対的な損失をもたらすのだという考えが固まってきます。
自分のFXのトレードコーチになると、メンタルコントロールを長続きさせる必要が出てきます。
自分の思考はビデオレコーダーのようなものですが、同時に結果を妨害するものでもあると考えると、改革は自由意志によるものではないのだと強く思うようになります。
来る日も来る日も記入内容を追っていけば、同じ思考、同じ行動、同じ損失が浮き彫りになり、チャンスを見逃したことによって自分の心に集中できるだけでなく、改革を推し進める動機を長続きさせることもできるのです。
FXトレーダーがこうしたブログ日誌をつけるときに犯す、一般的なミスは、記入内容が大ざっぱになって重要な内容や理解を見落としてしまうことです。
次に挙げるのは、詳細に欠け、FXトレード中のさまざまな状況で表れる特定の思考パターンや結果を理解するのに役に立たないブログ日誌の例です。
■FXブログで書くべき内容を書いていない大雑把な悪い例
状況:「朝チャートをチェックしなかった」
自分の言葉:「休憩を取る必要があるな」
結果:「絶好の為替相場の動きを見逃した」
■FXブログで書くべき内容を詳細に書いている良い例
では次に、同じ認知ブログでも詳細に記入した良い例を見てみましょう。
状況:「午前のトレードでミスをしてから良いアイディアだったことに気付いた。その損失の穴埋めをしようとポジションサイズを倍にした。」
自分の言葉:「これはすごいトレードになるぞ。もし思い通りの方向に動けば今日はプラスになる。あのトレードをし損なったのが良かったのかもしれない。」
結果:「経済レポートが発表され、為替相場が自分の思惑に反して動いた。レポートが出ていたのを忘れていた。私はパニックに陥り、数十万円の損失を確定してしまった。今月は良いスタートが切れたのにこれで赤字になった。」
このように、詳細を追加することで、何がトレーダーの脳裏をよぎっているのかがはっきりします。
自分の言葉を詳細に記すと、あるスキーマ(自尊心のスキーマ)では、まずはうぬぼれた思考や感情が引き金になり、次に欲求不満、敗北感や挫折感が引き金になり、一つのミスが別のミスにつながったりと、出来事と出来事の結びつきがはっきりしてきます。
また、自分の配偶者だけでなく自分自身にも力量を示す必要があると感じている場合には、その人の家庭生活がFXでのメンタルコントロールにどう影響するのかも分かってきます。
FXの自己教育者になると、ブログ日誌の記入内容と記入内容の「行間」を読みたくなるはずです。行間を読んでいると、自分の思考と思考の結びつきが分かってくることが多いです。
ある出来事が処理中にゆがみを誘発し、それが新たな出来事を誘発し、それがさらにゆがみを誘発するということです。
あなたへの課題は、自分の思考の流れと、それが自分の感情や行動とどう関連付けられているかを把握することです。
一度、心のドミノがどう倒れていくかがハッキリ見えてくれば、その処理を中断して自分の心を違った方向に向けることができるようになるのです。
自分の「最良の」トレードには、どのような『スキーマ=物事のとらえ方』や思考が伴ってくるでしょうか。FXが順調なときに考えていたことを日誌に記入してみると、解決志向で認知的な作業に入るのに役に立ちます。
一方、含み損が引き金になり、再び逆行して損益分岐点まで戻してくれればいいのに、という自然な願望が生まれます。
そういう思考は、損切りルールを破り、その後の後悔や自己非難という『スキーマ=物事のとらえ方』を誘発することも多いです。
FXには直観が果たす役割もありますが、自分が何か願望を抱いているような状況には警戒することです。
損益分岐点に戻り、大局観を取り戻すという意味では、そうした状況も悪くないですが、自分の観察者になると、否定的な思考そのものが信頼できるトレード指標になってくるのです・・・