前のカテゴリでは、自己改革のプロセスヘの精神的アプローチについて解説しました。

その枠組みは、自分の心の動きとの力強い関係を利用して、過去の葛藤から続いている行動パターンを打ち破るというものでした。

それを自己教育に応用した場合、メンタルコントロール的な視点で見るには過去と現在の両方を考察し、現在のFXトレードで過去のパターンが繰り返されるようなケースを認識する必要があります。

一方、『認知』は、どちらかと言うと現在志向です。

私達はどう考えるのか・・・つまり私達の思考と、感じ方や行動の仕方との関係に焦点を当てるのです。

メンタルコントロールへの認知的アプローチは、次のカテゴリでお話する行動療法と同じように、学習理論に根ざしたものです。

さまざまな関係を体験することではなく、「スキルを高めること」に焦点を当てています。

したがって、認知的なアプローチでは課題の練習問題が重要になり、自己教育にとっても『認知』がとくに役に立ちます。

認知的コーチングでは、あなたは情報処理のスキルをより積極的に学ぶことになります。

例えば科学者というのは、一度その関係に気づいたら、理論を打ち立てて観察結果を説明します。また、実験をしてその理論を検証し、以前の理論を修正できるような新たな観察結果を発表します。

このように、科学者は検証、観察、修正、また検証といったプロセスを通して、じっくりと世界に対するこれまで以上に正確な理解に到達していくわけです。

FXにおけるスキーマとは

認知心理学者はこの理論を「スキーマ=個人個人の物事のとらえ方」と呼んでいます。

スキーマとは心の地図のようなもので、周囲の世界に適応できるよう、私達の位置づけを正してくれるものです。

私達はこのスキーマを通してさまざまな物事や他人とのやり取りを解釈し、可能であればそうしたスキーマに新たな物事を同化させ、必要であれば自分たちの理解を新たな物事に合わせて調節します。

心理学者が説明しているように、この同化と調節のプロセスによって、私達は周囲の世界をより深く、十分に理解することができるのです。われわれは現実の地図を常に描き直しているのです。

スキーマとは、単に思考を集めたものではなく、思考や感情・行動の傾向の複合体です。

例えば、あなたが子供の頃に暴力を受けたことがあったとして、今でも世界を危ない場所だと認識しているとしましょう。

するとあなたの『スキーマ=物事のとらえ方』は、「他人を信用するな、みんなに殴られるぞ」となります。したがって、他人があなたを理解しようとするときにも、あなたのスキーマを通してあなたを見ることになります。

あなたは親しみを込めて対応するどころか、警戒心を強め、距離を置いてしまいます。

このスキーマのせいで、他人の行動を危険なものだと解釈するわけです。

ですが、そのレンズもゆがんでいること(色眼鏡で見ていること)があります。前の例のように、私達はゆがんだレンズで物事を見ては大げさに反応します。

FXの損益を通して自分の価値を見ているトレーダーの例を挙げてみましょう。

FXで儲かっているときには自信過剰になり、心も広くなりますが、スランプに陥っているときにはリスク回避的になり、自信をなくします・・・

このスキーマを通してFXの結果を見ているかぎり、このトレーダーは自分の収益についてもゆがんだ見方をし、ゆがんだ反応を示す可能性があるのです。

問題のパターンが大きくなるのは、私達の世界に対するゆがんだ反応を自ら強化してしまっているときです。

先の例では、他人に痛めつけられるから、あなたは他人を危ないもの、信用できないものだと認識しています・・・

たとえその人が親しみを込めて近づいてきてもです。

警戒心からあなたは、他人に敵対心を持っているか懐疑的になっているように見られ、相手は当然、親しみを込めた態度を取らなくなっていきます。

それでまた、あなたは自分の見方が間違っていなかったのだという確信を抱き、自分のゆがんだ『スキーマ=物事のとらえ方』を強化してしまうというわけです。

こうした自ら強化するような状態に陥ると、心の地図を描き直すのを止めてしまうものです。つまり、いや応なく世界を否定的に見てしまい、さらにそれに否定的な反応を示すようになってしまうのです。

FXにおける自動思考とは

『自動思考』とは、私達の『スキーマ=物事のとらえ方』によって、ある状況に置かれたときに瞬間的に浮かんでくる考えやイメージのことです。

一度そのスキーマの引き金が引かれると、普通はそれが私達の行動を導く一連の思考や感情を呼び起こします。

例えば、傷つきやすい自尊心という『スキーマ=物事のとらえ方』の場合には、FXで損をしたときには意気消沈し、考えあぐねた結果、「俺は絶対に成功なんかできないんだ」となってしまいます。

こうした思考や感情は、為替相場や自分のFXトレードを客観的に評価したものではないですよね。そうではなく、むしろ自動学習してしまった反応であり、習慣になってしまっているものです。

メンタルコントロールにおける認知的なアプローチの目標は、そうした否定的思考のパターンを断ち切ること・・・。

つまり間違った関連づけを断ち、一度学習したことをゼロに戻すこと、それをもっと現実的な世界の見方に置き換えることです。

このメンタルコントロールは、私達も科学者のように自分の理論を修正しなければならないという意味です。こうした理論の修正方法を示したものが、認知的アプローチなのです。

リスクや不確実性と闘っているときの、FXトレーダーの心を左右する自動思考の例

●「もっと儲けなければ」
●「私は何てバカなんだ。なぜあんなことをしたんだろう?」
●「俺はこのマーケットをやっつけてやった」
●「損をしている場合じゃない」
●「マーケットは俺をやっつけようと必死だよ」
●「とうとう損した金を取り戻したぞ」
●「自分のやることはことごとく間違っている」

認知という意味で、自分のトレードの自己教育者になるための最初のステップは、FX中に表れる自動思考を確認することです。

私が知っているあるFXトレーダーは、トレードする日はずっと自分の声を録音したり映像を録画したりするという、独特の対策を講じて、取引時間終了後にそれを再生して見直しを行っています。

これはFXトレードに伴って繰り返し表れる思考や感情を確認する素晴らしい方法です。

私達の体験を左右するような自動思考は一つか二つという場合が多いですが、メンタルコントロールでまず集中して取り組むことになるのがこうした思考です。

あなたへの課題は、FXをしている自分を映像か音声に記録しながら観察し、繰り返し表れる思考や感情をメモすることです。

最初のうちは思考が変わっても気にせずに、ある物事が特別な『スキーマ=物事のとらえ方』の引き金を引いたときに自分の心がどう奪われていくかを観察していれば良いです。

重要なのは、自分自身の体験から、自分には意思や心の完全な自由はないのだということを理解することです。だれもがロボットのようになって思考を再生し、それが単なる習慣になっていることもあります。

こうした習慣的な思考パターンを観察することで、自分をそうした思考から切り離す行程をスタートさせることです。

最も問題の多い自動思考が表れるのは、疲れているとき、または打ちのめされているときです。

仕事や責任、FXトレード上の難問など、重い負担を抱えていると感じていたときのことを思い出してみましょう。そのときにはどのような思考が心に浮かんできていたでしょうか。

その思考は自分の感情や行動をどう左右していたでしょうか。

自分の心の動きを左右する否定的な思考パターンや『スキーマ=物事のとらえ方』をはっきりと把握するには、精神的に最も弱っているときの自分を観察してみると良いです・・・

FXメンタルコントロールに成功した人の画像

『FXにおける物事のとらえ方』の解説ページです。


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